君よ知るや南の国
君や知る、レモン花咲く国
暗き葉かげに黄金(こがね)のオレンジの輝き
なごやかなる風、青空より吹き
テンニン花は静かに、月桂樹は高くそびゆ
君や知る、かしこ。
かなたへ、かなたへ
君と共に行かまし、あわれ、わがいとしき人よ。
君や知る、かの家。柱ならびに屋根高く、
広間は輝き、居間はほの明かるく、
大理石像はわが面を見つむ、
かなしき子よ、いかなるつらきことのあるや、と。
君や知る、かしこ。
かなたへ、かなたへ
君と共に行かまし、あわれ、わが頼りの君よ。
君や知る、かの山と雲のかけ橋を。
ラバは霧の中に道を求め、
洞穴に住むや古籠の群。
岩は崩れ、滝水に洗わる。
君や知る、かしこ。
かなたへ!かなたへ
わが道は行く。あはれ、父上よ、共に行かまし!
(高橋健二 : 訳)
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君知るや南の国
レモンの木は花咲き くらき林の中に
こがね色したる柑子は枝もたわわに実り
青き晴れたる空より しづやかに風吹き
ミルテの木はしづかに ラウレルの木は高く
雲にそびえて立てる国や 彼方へ
君とともに ゆかまし
(森鴎外 : 訳)
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君よ知るや南の国
レモンの花咲き オレンジのみのる国
空は青く 風はさわやか
桂(かつら)はそびえ ミルテかおる
君よ知るや かの国
はるかに はるかに
恋人よ 君といこうよ
君よ知るや 南の国
そこにある わがすみか
広間あかるく 花の香みちる
「おまえは しあわせ?」
やさしく といかける ふるい胸像
はるかに はるかに
恋人よ 君といこうよ
(三木澄子 : 訳)
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